マイコプラズマ肺炎の話を家畜で語る回

皆さまこんにちはこんばんは。ケモミミ本舗です。

マイコプラズマ肺炎がものすごく流行しているようです。

なんと昨年同時期の50倍以上も感染者が出ているのだとか…こわ…
8年ぶりくらいの流行らしいですが、だとしてもすごいですよね。
(マイコプラズマ肺炎だけでなく、劇症型連鎖球菌症とかプール熱とかなんせいろいろ流行ってるみたいです)

以前、RSウイルス感染症(RSウイルスの話)のところでもちょっと出しましたが、このマイコプラズマ肺炎ってのは畜産業界ではとても厄介な病気として知られている感染症です。

ということで今日は家畜を例にしてマイコプラズマ肺炎について書いていきたいと思います。

家畜のマイコプラズマ肺炎と人のマイコプラズマ肺炎は異なるものですが、雰囲気は共通するものが多いので、これが人だったらどういうシチュエーションかなぁなんて考えながら読んでいただけると面白いと思います。

(それにしてもいったいどこにこんな病原体が転がってるんでしょうね。
環境でどうやって維持されてるか理屈では分かっても納得できない感がやっぱり強いです…)

家畜の飼育環境とマイコプラズマ肺炎

人間と違って、ほとんどの家畜は環境や気温によって影響を受けやすい畜舎で生活します。

鶏は窓のない完全に管理されたウインドウレス鶏舎に飼われることも多い(大手はむしろほぼこれですね)ですが、それでも空調完備なんていう畜舎はほぼありません。

畜舎は疾病予防や臭気がこもらないようにするという観点から換気にはかなり配慮した設計になっていますが、それでも気温の変化や床からのほこり、同居畜の存在(幼獣の時は多頭飼いされることが多いです)など、やはり肺炎や下痢を中心とした疾病が発生する率は高い傾向にあります。

マイコプラズマ感染症は一度感染してしまうと完治に非常に時間がかかるので(というか肺そのものが感染等による損傷に対してとても弱く、治癒も非常に遅い(もしくは治らない)です)それがベースになって他の原因菌等による肺炎がさらに起きた場合、単一での肺炎より病状が重くなったり治癒期間がより長くかかったりしてしまいます。

家畜はどうしても効率化から多頭数羽の飼育になるため疾病が発生した場合広がりやすい環境でもある、というのも対策の難しさに拍車をかけてますね。

マイコプラズマ肺炎の症状と治療の実態

肺炎は、肺でガス交換を行う場所である肺胞に炎症が起きるものと、肺胞と肺胞の間にある組織に炎症が起こる「間質性肺炎」があります。

この「間質性肺炎」は肺胞の間に炎症を起こすので、肺胞のガス交換もしにくくなりますし、それにより呼吸のクオリティがかなり下がります。

症状として最も多いのは「呼吸の苦しさ」と「乾いた咳」でしょうか。
一般的な細菌性肺炎による咳のようなタンの絡んだようなぜろぜろした咳は出ません。
(参考:間質性肺炎の原因はさまざまです。細菌だったりウイルスだったり他の微生物だったり石綿や炭鉱のような微小物質だったり免疫性のものだったりいろいろあります)

一般的に細菌やウイルスによる肺炎というと肺胞で炎症が起きる肺炎が多いのですが、マイコプラズマはこの「間質性肺炎」を起こす場合もあるので注意が必要なのです。
(新型コロナ感染症も間質性肺炎を起こすので非常に厄介です)

人の場合、治癒の難しい間質性肺炎であっても加療が行われますが、家畜の場合当然のようにそう万全に治療ができるわけでもないので長く長く患うわけです。
そして、痛んだ肺を抱えたまままた他の肺炎にかかると…どうなるかなんて火を見るより明らかですよね。

人の方のマイコプラズマ肺炎については実際に目で見たことがない(解剖等)し、家畜のマイコプラズマ肺炎とは原因菌も異なるので同列に語ることは難しいのかもしれませんが対応の難しさとしては似たようなものではないでしょうか?

マイコプラズマ肺炎の対策

さて、こんな対応の難しい病気に対してどう対策したらいいのか、という話ですが、家畜の場合は

  1. 病原体を農場(畜舎)に入れない
  2. 農場内(畜舎内)の衛生レベルを上げる
  3. 家畜が体力を減らさない環境を作る

をそれぞれ可能な限り高いレベルで実施していくことが主な対策になると思います。

1. 病原体を農場(畜舎)に入れない

鶏や牛の飼育では、生まれてから出荷までずっと同じ農場、ということはほとんどありません。
(豚は妊娠出産を飼育サイクルに入れ込んだ農家さんが多いです)
ヒナまで育ったものや子牛まで育ったものを「必要な群の日齢や月齢を揃えて購入する」ので、販売元の農場の衛生状況や疾病の発生状況を確認した上で購入することが可能、というメリットがあります。

とは言え、研究室のような管理された飼育状況が作れる農場などほぼ存在しないのでやや机上の空論にも近い対策となっています。

特定の病原体をなくすまで持っていくには、本当に恐ろしいほどの労力と時間がかかるのです。
(しかも病原体が入ったらまた最初からやり直し)

2. 農場内(畜舎内)の衛生レベルを上げる

これはわりと現実路線の対策となります。

畜舎環境で言えば清掃が行き届いていればいるほど病気にかかりにくくなりますし、家畜側から言えば例えばワクチンによる抗体維持なんてのが疾病に対して抵抗性を持つことにつながります。
(まぁマイコプラズマの場合いいワクチンがないのでワクチンに関しては期待できませんが)

あたりまえと言えばあたりまえの話になるわけですが、畜舎は多頭羽飼育になればなるほど広く大きくなりますし、作りも複雑になっていったりもします。
その分ほこりや汚れが相対的に増え、頭羽数に比例した糞尿の量も増えるわけですから手間も増えていきます。
頭羽数換算から見れば少ない頭羽数の時より効率的に清掃できるのでしょうが、なんせ絶対量が多いので「きれい」なレベルを維持するのは本当に大変です。

まぁそれでも病気が出て大変なことになるよりははるかにマシなので皆さん頑張るわけですが。

「病気を出さない」というのは、消費者にとって安心であるだけでなく、農場側にとっても経済的なメリットが大きいんです。

3. 家畜が体力を減らさない環境を作る

人も同じですが、家畜も健康を保つために生活環境が大きく影響します。

清潔な水、カビや虫のない安全な飼料、ホコリの少ない空気、清潔で安全な寝床…
前章の環境の衛生レベルの維持とも重なる部分はありますが、これらのレベルが下がるだけで簡単に家畜は体力が削られ不調となります。

言うまでもなく生活する上での環境にはたくさんの細菌やウイルス(他にもカビや虫、化学物質も)が存在します。
通常の生活空間でかつ健康であれば大きな問題もなく過ぎていく状況であったとしても、「不調」になると思わぬ「感染」が起き、病気を発症することにつながるリスクが高くなります。
(新型コロナみたいにそんなものは関係なく感染をぶっ込んでくるヤツらもいますが)

上記のものをどれくらい持続的にあたりまえに続けられるか、ということが健康につながるのです。
このあたりは人も同じですよね。

毎回似たようなことばかり書いて申し訳ありませんが、こういった「適切な環境」を維持するためには農場側の努力だけでなく、社会としても農場がこれらを維持できるだけの体力を持てるようにし続ける不断の努力が欠かせません。

まとめ

集団で飼育されている家畜と違い、人の場合はまとめて強制的に管理することができません。(あたりまえですが)

そのため対策は個々人に委ねられることになるわけですが、ある程度の「指標」がないとなかなかきちんと対策なんてできません。
そこで「国」(や地方自治体)が流行している感染症の注意報を流したり、その対策を広報したりするわけです。

新型コロナ感染症の出始めは国も熱心に広報や指導をしていましたが、今やすっかり控えられてしまっていますね。
まだコロナにしても全然収まっていないんですけどねぇ…

同じことの繰り返しになりますが、老人や子ども、身体の弱い人たちはそれだけで疾病に対してリスクを持っています。
ですので、自分のためだけでなく、そういった「リスクの高い人たち」のためにも対策をする、という視点を持てるといいのにな、といつも思っています。

コロナ禍で対策がなされていた年にはインフルエンザの発生がものすごく減っていたことからも見えるように、感染症の対策はただ「その感染症を予防する」だけでなく、「他の感染症も抑制できる可能性が高い」のです。

やってることは地味で一見無意味に見えることでもあれだけはっきりと数字で出ているところを見ると認めざるを得ないと思うのですがいかがでしょう。

基本は 「手洗い、うがい、マスク」 です。
(手洗いも指先ちょろっと水に濡らすだけのは手洗いとは言わないので注意してくださいね)

社会的な衛生レベルの維持には面倒でも「不断の努力」が必要だとやっぱり思うのです。

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