人獣共通感染症とスピルオーバー

皆さまこんにちはこんばんは。ケモミミ本舗です。

みなさんは「スピルオーバー」って聞いたことありますか?

聞いたことあるよーって方は相当な生態学マニアなのではないでしょうか。
これはひとつの病原体が別の宿主に感染可能な状態になることを言います。

人獣共通感染症は動物がかかる病気に人も感染してしまうという意味から「共通」という言葉が使われていますが、これらの中に病原体が「スピルオーバー」を起こした結果人獣共通感染症となったものもある、ということですね。

野生動物を発端として人に重大な影響を与えた感染症はたくさんあります。

近年で言えば19世紀に起きたサルから人へ感染したとされるHIV(AIDS)感染症や、動物から人へ感染した可能性が高いとされているCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-COV-2が挙げられます。

参考:公益社団法人日本獣医学会 人獣共通感染症 連続講座

人獣共通感染症は一般的に、その疾病に感受性のある動物と人との間で起きるものですが、上記のHIVやCOVID-19のように「新興感染症」の原因ウイルスなどがスピルオーバーを起こして結果として人獣共通感染症になってしまうものもある、ということです。

(余談ですが、今次のコロナウイルス(COVID-19)はペットの犬猫からも感染が報告されています。おそらく感染した飼い主からうつされたんでしょう。強い症状が出たという報告は見てませんが今後報告数が上がってくるとまた違う状況になってくるかもしれませんね。)

コロナの感染で少し様相が変わっとは言え、現代は世界中のモノが恐ろしいスピードで流通しています。
それに加え野生動物の生息域に人が進出し、生息域を分断し、その多様性に影響を与えることで、より「新興感染症」の脅威が近くなったとも言えます。

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所の方が獣医雑誌に書いていたことの引用ですが、「生物多様性のホットスポットと、感染症のホットスポットとの地理的な重なりは大きいようであることから、生物多様性が高い地域での土地利用変化、すなわち生態系のかく乱がspilloverと関連することは間違いないだろう」とのことです。
他にも、同じ方が引用していた文献に「SARSウイルスの宿主として知られるコウモリ類の生息への影響を評価した結果、森林の分断化、家畜や人口の集中が強い影響力を持つ要因であることが明らかとなった」とありました。

19世紀より前は人と人との接触も限られていたために重大な感染が動物から人に起きてもその場で収束してしまって他には影響を与えなかった、なんてこともあったかもしれません。

いずれにしろ「スピルオーバー」は、流通・生態系の影響・生物の関係性といったさまざまな要素が絡みあって発生する事象なのでこれに対抗していくためには各方面の専門家が頑張るだけではとても太刀打ちできないと思います。
これらを調整・サポートできる政府が世界的に連携していって欲しいですね。

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