AIと(獣)医療

皆さまこんにちはこんばんは。ケモミミ本舗です。
今日は獣医療分野でAIをどう使うかという話を書こうと思います。

2023年は特にAIの快進撃の年だったようで、MidjourneyのAIが作り出す絵の精緻さと進化スピードに驚かされたことから始まって、キーワードに従って大量の文章を作り出すChatGPTの発表が大いに話題になりました。
AIの華々しい登場から数ヵ月が過ぎ、その驚愕の性能と内包する問題点の噴出で大いに沸いた世間も、少しずつ落ち着いてきました。
著作権やら個人情報の管理方法やらまだまだクリアすべきところは多々ありますが、AIそのものは世間的にかなり受け入れられてきたのではないでしょうか。
お絵描きAIも文章生成AIも各社さまざまな種類がどんどん出てきてその進化スピードもすごいことになっています。

AIの性能が向上し、安定してくると、当然次は「それをどう活かすのか」という話になってきます。

AIはお掃除ロボットと同じくいくら働かせても文句も言いませんし、一定の能力を持続し続けてくれます。(まぁその代わり時々平気で嘘を書いてきたりしますが。)
非常に単純な機能ではありますが、文章を書くときに便利な機能としてはコピー&ペーストなんてのがありました。これも何回も同じことを繰り返し書かなければいけない場面でどれほど望まれた機能であったか。
(今や若い人には冗談のように聞こえるかもしれませんが、昔は公的文書もほとんど手書きだったんですよ〜)
こんなちょっとしたところだけでなく、検索、プログラム、文章書き、アイデアの提案、とたくさんの場面で活用が可能になったなんて、本当に未来的ですよね。

機械だからこそ得意なこと。

そうです。機械は同じことの繰り返しや検索が非常に得意であり、面倒くさくなったり、飽きることもありません。何度やり直しや追加や訂正をさせられても精神的に追い詰められたり疲れたりもしません。
与えられた「設定」に従って一定のクオリティを保つことができます。

では、そんな能力を診療分野でどう活用できるのか?

診療とは、患者から提示されたいくつかの「稟告」の中から最も相応しい「疾病名」を探り、治療法を検討する作業です。(※りんこく・ひんこく=医師側からの問診に従って患者が答えるもののこと。さまざまな症状や時期・期間、等々。動物の場合、品種や血縁関係も重要なキーワードになります。)

患者さんから問診によって伝えられた「稟告」には当然患者さんの主観が入っており、「盛りすぎ」や「言い忘れ」があることも加味して考えなければなりません。そのための診断の補助として血液検査や画像検査などの諸検査が存在します。
診療行為は、稟告と種々の検査結果の中から、考えられる疾病を絞り込み、正しい診断を下し、相応しい処置を施すことを意味します。

この「疾病名の絞り込み」を一般的に“鑑別診断”と言い、それは医師(獣医師)の膨大な知識と経験から導き出されます。

ほら、ちょっとAIにやってもらえそうなニオイがしてきましたよね。

AIを診断に利用することは当然誰でも考えることのようで、人の医療の方でもChatGPTで診断させる試験をやっていました。(日経メディカル「ChatGPTによる鑑別診断、実力はどれほどか?」)
日経メディカルの実験について簡単に書きますね。
人間の医師が考えたさまざまな症例について、ChatGPTに鑑別診断として10個上げさせたところ、10個内に正答があった確率は80%以上、10個のうち1番最初にあげた解答が正答した確率は50%以上あったそうです。(同じ問題を人の医師にやらせた正答率は98%以上)
(GPT3とGPT4でも違いが出たそうですが、詳しいことは上記の記事をお読みください)
医療用のAIでなくともこれだけの正答率を出してくるなんて、将来的には十分活用可能な手応えを感じますよね。

AIは所詮機械なので機械的な判断が必要とされる場面では威力を発揮すると思われます。
「診断」が、膨大であるにしてもある程度のDB(データベース)さえ準備できるのなら十分実用可能になりそうです。
「情報の蓄積とそこからの検索」能力にいつかは人間が機械に勝てなくなりそうです。
人間特有の“経験の積み重ねとそこからもたらされるカン”がなければすぐにでも取ってかわられそうですよね。

現実的な活用方法として考えられるのは、稟告から補助的にAIに鑑別診断を出させて、それらを参考にしながら人間の医師(獣医師)が実際の診断をする、というところでしょうか。
お医者さんや獣医さんも人間なので“思わぬ見落とし”をする可能性がありますが、そのあたりAIが補完してくれると心強いですよね。

今度のAIに期待します。

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